アクチュアリー会の生保1のテキスト1.8.1.3に、「保険料率の区分にあたって留意すべき事項」として8項目が列挙されています。
- 同質性
- 分離の必然性
- 測定可能性
- 定義が明確であること
- 将来に向けて予測可能であること
- 危険を減少させるインセンティブとなること
- 制御可能性
- 社会的に容認されること
テキストには、この8項目を指摘したのは「海外の著名なアクチュアリー」とあります。誰?という疑問はそっと置いておいて、AAAの実務基準を調べてみました。
ASOP12ASOP12の「3.2 Considerations in the Selection of Risk Characteristics」に、7つの項目が列挙されています。
- リスク特性と期待される結果の関係(Relationship of Risk Characteristics and Expected Outcomes)
- 因果関係(Causality)
- 客観性(Objectivity)
- 実用性(Practicality)
- 適用法令(Applicable Law)
- 業界の慣習(Industry Practices)
- 商慣行(Business Practices)
因果関係を言及している点が興味深いので、以下の通り因果関係の部分を引用します。
While the actuary should select risk characteristics that are related to expected outcomes, it is not necessary for the actuary to establish a cause and effect relationship between the risk characteristic and expected outcome in order to use a specific risk characteristic.
ASOP 12 Risk Classification
ASOP 12の「Considerations in Establishing Risk Classes」には、4つの項目が列挙されています。
- 使用目的(Intended Use)
- 数理計算上の留意点(Actuarial Considerations):逆選択(Adverse Selection)、信頼性(Credibility)、実用性(Practicality)
- その他の留意点(Other Considerations):法令遵守(comply with applicable law)、業界の慣行(industry practices)、商慣行による制約(limitations created by business practices)
- リスク分類システムの検証(Testing the Risk Classification System)
長年にわたり、数多くのリスク分類システムが設計・利用され、そして経験に応じた修正がなされてきた。医学、経済学、その他の分野の進歩や、アクチュアリアル・サイエンス自体の進歩により、これらのシステムは進化し続けている。将来の発展の正確な予測は無理だが、実務を行うアクチュアリーは、現在そして新たに生まれる最新の実務を把握するための合理的な手段をとることができる。これらの実務は、分野によって大きく異なる可能性がある。例えば、生命保険のリスク分類は、顧客の健康状態、喫煙習慣、職業などを反映して細分化されることがあるが、年金制度ではこれらの要素は通常考慮されない。
リスク分類システムのイノベーションは、かなりの議論を引き起こす可能性がある。生命保険や医療保険のリスク分類に遺伝子検査を用いるかもしれない点は、その一例である。場合によっては、論争の結果、法令や規制が制定されることもある。例えば、郵便番号の利用は、幾つかの種類の保険では禁止されている。しかしながら、ほとんどの場合、リスク分類の法的取扱いは数十年前から変わっていない。リスク分類は、健全な保険数理の原則に基づき、実際の経験または合理的に予想される経験に関連する限り、認められる。
ASOP 12のCurrent Practicesを仮訳
このASOP12の施行日は2006年のことですが、現在はビッグデータの時代。そんな時代におけるリスク細分の議論が米国で今、繰り広げられています。
Correlation.IB_.6.22_final