定期的な運動は新型コロナによる死亡を最大42%防ぐことができる
British Journal of Sports Medicine に掲載されたディスカバリー社の論文です。論文のタイトルは「Small steps, strong shield」。ディスカバリー社のサイトに要約記事が掲載されていました。
論文の背景と概要
この論文は、客観的に測定された身体活動データを用いた最初の研究。身体運動と新型コロナによる有害事象に対する予防との間に正の相関があることが実証された。これは、定期的な運動が健康や免疫の構築に良い影響を与えることを示唆するもの。
Witwatersrand Sport and Health Research GroupのJon Patricios教授、VitalityのウェルネスクリニックのDeepak Patel、Lizelle Steenkamp率いるDiscoveryのアクチュアリーチームは、新型コロナに感染したVitality会員の身体活動データを分析。
その結果、適度な運動量と高い運動量の両方が、新型コロナに感染した際の重症度の低さと関連していることが分かった。この研究により、新型コロナの重症化から身を守るには、最も活動的な人が明らかに有利であることがクリアになった。また、中程度のレベルの運動でも明らかな利点があり、高血圧、糖尿病、慢性腎不全の人に対する活動の予防効果も認められた。
新型コロナに感染したVitalityとDiscovery Healthの会員65,000人の経験データと、2020年3月の南アフリカでのハードロックダウンの2年前の運動レベルを照合。定期的な運動による健康効果はよく知られているが、客観的に測定されたデータ(スマートデバイスで取得、ジム通い、大規模なスポーツイベントへの参加)に基づいてこれらの洞察を導き出したのは、今回が初めてのこと。
- 身体活動参加データは、高運動者(週150分以上の中強度身体活動)、中運動者(週60~149分の中強度身体活動)、低運動者(週60分未満の中強度身体活動)の3カテゴリーに分けられた。
- パンデミック前に最高レベルの身体活動をしていた人は、新型コロナによる入院のリスクが34%、ICU入院のリスクが41%、人工呼吸を必要とするリスクが45%、死亡のリスクが42%低下。
- 中程度の活動をしている患者でも、活動量の少ないグループに比べ、入院のリスクが13%、ICU入院のリスクが20%、人工呼吸のリスクが27%、死亡のリスクが21%低くなっていた。
- 高齢者、男性、高血圧や糖尿病があると新型コロナのアウトカムが悪くなる可能性が高くなるが、高いレベルの運動は、健康な人よりも、これらのリスクの高いグループに対してさらに大きな影響を与える可能性がある。
論文の要旨
目的
新型コロナと確定診断された患者において、直接測定した身体活動と入院、集中治療室(ICU)入室、人工呼吸、死亡率との関連を明らかにすること。
方法
2020年3月19日から2021年6月30日までに新型コロナと診断された成人患者65,361名の直接測定した身体活動データを、低活動(60分/週未満)、中活動(60~149分/週)、高活動(150分/週以上)にグループ化。身体活動レベルと悪いアウトカムのリスクとの関連は、修正ポアソン回帰を用いて分析した。新型コロナのアウトカムに影響を及ぼすことが知られている状態を含む人口動態、併存疾患、およびJohns Hopkins Adjusted Clinical Groupシステムで測定した患者の合併症を考慮した。この回帰法は、有向無サイクルグラフから構築されたベイジアンネットワークモデルを用いてさらに検証された。
結果
高い身体活動は、低い身体活動を行った人に比べて、新型コロナによる入院(リスク比、RR 0.66、95%CI 0.63~0.70) 、ICU入院(RR 0.59、95%CI 0.52~0.66) 、人工呼吸(RR 0.55、95%CI 0.47~0.64) 、死亡(RR 0.58、95%CI 0.50~0.68 )の率が低くなったことと関連していた。中程度の身体活動も、入院(RR 0.87, 95% CI 0.82~0.91)、ICU 入室(RR 0.80, 95% CI 0.71~0.89)、人工呼吸(RR 0.73, 95% CI 0.62~0.84)および死亡(RR 0.79, 95% CI 0.69~0.91)が少ないことと関連していた。
結論
新型コロナに感染した場合、身体活動レベルが高い成人および中等度の成人は、低い成人に比べて有意に良好なアウトカムを示した。定期的な身体活動の明らかな予防効果は、慢性疾患を併発している者にも及んだ。