国際アクチュアリー会の気候変動リスク関連の出版物で用いられる用語集

2021年8月時点の用語集です。

  • ACPR:フランスの銀行・保険監督機関
  • 適応:実際の、または予想される気候とその影響に適応するプロセス
  • 人為的な(Anthropogenic)地球温暖化:人類が輩出した温室効果ガスが原因で起こる地球温暖化
  • ARn:IPCCのn番目の評価レポート。第1次評価報告書はFARと呼ばれ紛らわしい。
  • BAU:Business as Usual。温室効果ガス排出量を削減するための行動をとらない場合のシナリオ。2100年までに放射強制力が8.5W/m2となる経路(代表濃度経路8.5)に相当する。
  • 生物圏(Biosphere):地球上のすべての生態系の総体、または生命の存在する領域
  • BP:英国石油公社
  • カーボン・フットプリント:特定の人間活動によって大気中に排出される温室効果ガス(主に二酸化炭素)の量
  • 一人あたりのカーボン・フットプリント:一人あたりの二酸化炭素排出量を示す指標。カタールは50トン、カナダやアメリカは約16トン、EUは8.6トン、サハラ以南のアフリカではゼロに近い値となっている。(データは2018年のEDGARより)
  • GDPあたりのカーボン・フットプリント:GPDあたりの二酸化炭素排出量を示す指標。購買力平価でのGPDあたりのkgで測定される。中国は0.5、アメリカ・カナダは0.3、スイスは0.1。(2016年の世界銀行のデータ)
  • CBES:Climate Biennial Exploratory Scenario (イングランド銀行)
  • CCS:Carbon Capture and Strageの略で、二酸化炭素を回収し、大気中に放出されないように貯蔵する技術
  • CFRF:Climate Financial Risk Forumの略。2019年に設置されたフォーラムで、英国の健全性・コンダクト規制当局であるPRAとFCAが共同議長を務めている。
  • 気候:天候の長期的な平均値と変動幅のことで、通常30年間の平均値
  • 気候アクション100+:世界最大の温室効果ガス排出企業による気候変動に対する必要な行動を確保するために2017年に開始された投資家イニシアティブ
  • 気候変動:大気、水循環、地表、雪氷圏、生物圏およびそれらの相互作用を含む気候系の平均値および/または変動性における統計的に定義された変化
  • 気候難民:気候変動の影響から逃れてきた人たち。国連人権委員会は「気候変動の影響から逃れてきた難民は、養育国から帰国を強制されることはない」との判断を示した。
  • 気候関連リスク:気候変動が企業におよぼす潜在的なマイナスの影響
  • 気候システム:大気圏、水圏、雪氷圏、岩石圏、生物圏の相互作用で構成される
  • CO2換算:二酸化炭素換算は、温暖化係数の異なる温室効果ガスの排出量を合算して、分析・比較を容易にするための単位。しかし、この換算では、持続性の違いや、結果として温暖化効果が表れる時期の違いを十分に反映することができない。
  • COP:気候変動枠組み条約の最高意思決定機関であり、毎年開催される締約国会議。条約の締約国であるすべての国が代表として参加し、COPで条約およびCOPが採択したその他の法的文書の実施状況を確認し、制度や運営上の取り決めなど、条約の効果的な実施を促進するために必要な決定を行う。
  • 雪氷圏(Cryosphere):海氷、湖氷、河川氷、氷河、積雪、氷床、永久凍土など、水が凍結している地表の部分
  • CMSI:Climate Measurement Standards Initiative(オーストラリア)
  • CSR:Corporate Social Responsibility
  • CSSR:気候科学特別報告書(Climate Science Special Report)は、米国地球変動研究プログラム(USGCRP)から4年ごとに発行される。USGCRPは、4年に一度義務付けられている国家気候評価(National Climate Assessment)に科学的知識を統合するための評価プロセスに向かっている。このプロセスの一環として、USGCRPは、気候変動とその物理的影響に関する現在の科学状況を詳述した技術報告書であるCSSRを作成している。CSSRは、米国における気候変動に焦点をあて、将来のUSGCRPのプロダクトに情報を提供することを意図している。
  • EIOPA:European Insurance and Occupational Pensions Authority
  • ERM:Enterprise Risk Management
  • ESG:Environmental, Social and Governmentの略で、投資や事業の持続可能性や社会的影響を測定するための要素
  • FAR:IPCCの最初の評価レポート(1990)
  • FCR:Financial Condition Report
  • 地球工学:地球温暖化の影響を緩和するために、地球の気候系に意図的かつ大規模に介入すること。日射管理技術や温室効果ガス除去技術などが含まれる。
  • GFC:Global Financial Crisis
  • 水圏:地球の表面、上、下に存在する水の総量
  • GHG:温室効果ガス・熱赤外域の放射エネルギーを吸収・放出する気体。地球大気中の温室効果ガスは、主に水蒸気(H2O)、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、オゾン(O3)。
  • GWP:地球温暖化係数(Global Warming Potential)。大気中の温室効果ガスが吸収する熱量を、同じ質量の二酸化炭素が吸収する熱量の倍数で表したもの。二酸化炭素のGWPは1、メタンは12.4、四フッ化炭素(CF4)は50,000。
  • IAA:International Actuarial Association
  • IEA:International Energy Agency
  • IMF:International Monetary Fund
  • IPCC:気候変動に関する政府間パネル。気候変動に関する科学的評価を行う国連の機関。1988年に国連に設立され、国連または世界気象機関に加盟している政府によって構成される組織で、195名のメンバーで構成される。(2020年のIPCCのデータ)
  • キーリング曲線:ハワイ島マウナロア観測所で撮影され、スクリップス海洋研究所が1958年から現在まで継続して公開している、地球の大気中の二酸化炭素濃度の日変化量値をppm単位で表したグラフ。
  • 京都議定書:1992年の地球変動枠組み条約を拡張した国際条約で、地球温暖化が人為的なものである可能性が極めて高いという科学的コンセンサスに基づき、締約国の温室効果ガスの排出削減を約束するもの。1997年に京都で採択され、2005年に発行した。現在、議定書の締約国は192ヶ国。
  • 岩石圏(Lithosphere):地球の地殻と最上部のマントルのこと
  • LRR:Legal and Reputation Risks
  • メタン・クラスレート:結晶構造内に大量のメタンを含む水氷の一種で、海洋堆積物や永久凍土の下に存在する。その放出は、人為的な炭素排出を大幅に増加させると考えられる。
  • 緩和:新技術、再生可能エネルギー、高効率化、低消費電力化、消費者行動の変化などにより、温室効果ガスの排出を削減または防止する取組み
  • マイナス排出:炭素補足技術の利用、土壌の炭素捕捉の改善、森林の増加により、排出量をマイナスにできる可能性がある
  • ネットゼロ・シナリオ:2100年ではなく、2050年までにネットゼロ排出を達成し、累積二酸化炭素濃度を400ppm以下に抑えるシナリオ
  • NDC:Nationally Determined Commitmentsは、パリ協定の中核をなすもの。パリ協定は、各締約国に対し、2020年以降の気候変動対策について達成しようとする国別意思決定貢献量を逐次作成、伝達、維持することを求めている。NDCは、各国の排出量を削減し、気候変動の影響に適応するための努力を具体化したもの。
  • NDCシナリオ:2100年までに放射強制力を2.6W/m2にするような排出量を想定したシナリオ(代表的な濃度経路2.6)
  • NGFS:Network of Central Banks and Supervisors for Green the Financial Systemの略で、2017年12月のパリ・ワンプラネット・サミットで設立された。8つの中央銀行と監督当局は、パリ協定の目標を達成するために必要なグローバルな対応を強化し、グリーン投資や低炭素投資のためのリスク管理や資本動員を行う金融システムの役割を強化するために、NGFSを設立した。
  • 海洋酸性化:大気中の二酸化炭素の取り込みにより、地球の海のpH低下すること
  • OECD:Organisation for Economic Co-operation and Development
  • OPEC:Organization of Petroleum Exporting Countries
  • ORSA:Own Risk and Solvency Assessment
  • パリ協定:2016年に189ヶ国の政府が署名した、温室効果ガスの緩和、適応、ファイナンスを扱う国連気候変動枠組み条約内の協定。その長期気温目標は、世界平均気温の上昇を産業革命前に比べて2℃を大きく下回るように抑えること。そして、上昇を1.5℃に抑えるための努力を追求すること。
  • 経路:経路または軌跡と呼ばれる曲線でシナリオを表現し、時間とともに指標の進化を辿るもので、しばしば信頼区間によって補完される
  • 永久凍土(Permafrost):連続2年以上0℃以下で推移する地盤(土や岩石、氷や有機物を含む)
  • 物理的リスク:地球変動に起因するリスクは、気候パターンのイベント駆動型(急性期)と長期的(慢性期)のシフトがある。物理的リスクは、資産への直接的な損害や、サプライチェーンの途絶による間接的な影響など、組織に財務的な影響を与える可能性がある。また、、水の利用可能性、調達、および品質の変化、食料の安全保障、ならびに組織の敷地、業務、サプライチェーン、輸送ニーズ、および従業員の安全に影響を及ぼす極端な気温の変化によっても、組織の財務パフォーマンスは影響を受ける可能性がある。
  • ppm:parts per million
  • QNV2030:Qatar National Vision 2030
  • 放射強制力:地球が吸収するエネルギーと宇宙へ放射されるエネルギーとの差。地球大気の入射・放出エネルギーのバランスを変化させる要因の影響力を示す指標であり、潜在的な気候変動メカニズムとして要因の重要性を示すもの。本報告書では、放射強制力の値は、産業革命以前の状態(1750年以前と定義)に対する変化であり、単位はW/m2
  • RCP:Representative Concentraion Pathwayの略。気候変動に関する政府間パネルで採択された温室効果ガス濃度の経路。温室効果ガスの排出量に応じて、さまざまな気候の未来が描かれている。2100年の放射強制力の範囲(2.6、4.5、6、8.5W/m2)にちなんで命名された。
  • RCPx:放射強制力xW/m2をもたらす代表的な濃度経路
  • 再生可能エネルギー:人間の時間スケールで自然に補充される資源から生成されるもの。例えば、風、太陽光、雨、潮、波、地熱などから生成される
  • 気候変動に関する科学的コンセンサス:地球が温暖化しており、この温暖化は主に人間活動によって引き起こされているという、ほとんどの科学者や科学団体の合意。このコンセンサスは、科学者の意見に関するさまざまな調査や科学団体の立場表明によって裏付けられており、その多くは気候変動に関する政府間パネルの統合報告書に明確に同意している。現在、主要な科学団体の中で、米国石油地質学会だけが、非同意的な声明を発表している。
  • SDGs:Sustainable Development Goals
  • シフト・プロジェクト:2010年に設立されたフランスの非営利シンクタンクで、気候変動と経済の化石燃料への依存を制限することを目的とする
  • SSPs:Shared Socioeconomic Pathways
  • 座礁資産:予期せぬ、あるいは早すぎる評価損、切り下げ、負債への転換に見舞われた資産
  • TCFD:金融安定理事会が設立した「気候関連財務情報開示タスクフォース」。メンバーは、G20の構成員全体から情報開示の利用者と作成者の双方を含む、幅広い経済セクターと金融市場を対象に金融安定理事会が選定。
  • 移行リスク:低炭素経済への移行に伴うリスク。気候変動に関連する緩和と適応の要件に対処するために、政策、法律、技術、市場などの広範な変化を伴う可能性がある。このような変化の性質、スピード、焦点によって、移行リスクはさまざまなレベルの財務的・風評的リスクを組織にもたらす可能性がある。
  • UNEP:国連環境計画。1972年に設立され、国連の環境活動を調整し、開発途上国が環境に配慮した政策や慣行を実施できるように支援する役割を担っている
  • UNEP FI:国連環境計画の金融イニシアティブ。1992年、リオデジャネイロでの国連環境計画の地球サミットの後、金融セクター間で設立されたグローバルなパートナーシップとして誕生。
  • UNFCC:国連気候変動枠組み条約は、国連環境条約として採択された。その目的は「大気中の温室効果ガス濃度を、気候系への危険な人為的干渉を防止するレベルで安定化させること」。
  • UNPRI:国連責任投資原則。投資家の国際的なネットワークによって支持されている6つの理想的な原則。
  • WEC:World Energy Councilの略で、エネルギーの持続可能な供給と利用を促進するフォーラム
  • W/m2:1平方メートルあたりのワット数
  • WMO:世界気象機関は、193の加盟国と地域からなる政府間機関で、国連の専門機関の一つ

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