「歩く」ことで、社会保障費を軽減できるのか?
関西で「歩く」通じた財政再建 社会保障費の抑制急務
2021年11月25日の日経新聞に、こんなタイトルの記事がありました。
- 自治体や企業で「歩く」ことを通じて、社会保障費の軽減につながる動きが出てきた
- 「自分の足でしっかり歩く」というコンセプトのポラリスの取り組みが紹介
- 一方、自立支援介護には、介護保険の利用者が減ると、事業者の収入が減るというジレンマがある
- 高石市の「健幸ポイント事業」では、一人あたり医療費がピーク時から0.4%減少
- 島根県では、転倒を防ぐ専用カートを使って、高齢者の足腰を鍛える「ショッピングリハビリ」が始まる
- 新型コロナの影響で、要介護者の増加が懸念される
歩くとポイントを獲得できる、健幸ポイントプロジェクト
これは、記事でも紹介されている、筑波大学の久野先生がリードして行われているプロジェクト。筑波大学、みずほ銀行、みずほ情報総研、つくばウエルネスリサーチが2014年にスタートした実証研究です。
歩数を含む広範なインセンティブを付与することで、医療費削減を実現した興味深いプロジェクトです。
プロジェクトの概要
- 高石市を含む、6つの自治体が対象
- 対象者は40歳以上の市民
- 市民は、歩数計を装着
- 健康無関心層の行動変容を促すために、年間最大24,000ポイントのインセンティブを付与
- ポイントは、Pontaポイントや商品券に交換可能
ポイント付与の仕組み
名前 | 説明 | 最大ポイント |
入会したよ ポイント | 健幸ポイント制度参加と同時に有料のプログラムに入会した場合にポイント付与。 | 1,000 or 3,000pt (入会時のみ) |
がんばってます ポイント | 基準歩数に比べて一定量の歩数が増加した場合、および推奨される歩数を達成した場合にポイントを付与。 | 9,600pt/年 |
行きました ポイント | 指定のプログラムに参加した日数に応じてポイント付与。ただし、月最大10日分の参加までがポイント対象とする。 | 2,400pt/年 |
変わりました ポイント | 3カ月毎のBMIまたは筋肉率が改善した場合、およびそれらの数値が基準範囲内である場合にポイント付与。 | 4,000pt/年 |
続けたよ ポイント | 6カ月連続で健幸ポイントの獲得が確認できた場合にポイント付与。 | 1,000pt/年 |
健診受けたよ ポイント | 健康診断のデータにより健診受診が確認できた場合にポイント付与。ただし、対象となる健康診断は毎年度1回のみとする。 | 1,000pt/年 |
健康になったよ ポイント | 1年毎の健診データが改善した場合、およびそれらの数値が基準範囲内である場合にポイント付与。 | 3,000pt/年 |
合計 | 24,000 pt/年 |
行動変容を促すために必要なポイント
- インセンティブ
- 心理学的アプローチ
- コミュニティ、社会的、家族へのアプローチが効果的
- 労働環境のデザイン
- 介入プログラムに対する認知の低さへの対処
- 社会全体でより身体活動を促す相互補助アプローチの構築
インセンティブを付与することで、歩数は増加
「歩く」ことで、高齢者の医療費を抑制
- BMI25以上の参加者の中で約26%が、18カ月目にはBMI25未満に改善
- 2013年度と2015年度の6市全体における国保険加入者の一人当たり医療費は、対照群と比較して、60歳代では年間約4.3万円、70歳以上では年間約9.7万円の抑制効果があった
- 事業全体の効果額(=年間医療費抑制額+地域経済波及効果-年間事業費):年間で約4.7億円