AIで保険金支払いを完全に自動化できるのか?

2021年11月29日の日経新聞に「損保ジャパン、最短30分で保険金支払い AI審査」という記事がありました。

記事の要約

  • 損保ジャパンは2022年度中にAI審査を導入し、LINEのチャット機能を用いて、保険金請求から支払いまでをデジタル完結する
  • 年間50万件程度ある傷害保険が対象
  • 2023年度には自動車保険や火災保険などにも広げる方針
  • AIのアルゴリズムはAutomagiと共同開発

どの程度の業務が自動化されるのかが気になったので、損保ジャパンのリリースを見てみました。

「困ったときはバックオフィスの担当がサポート」とあるので、すべての請求が完全に自動化される訳ではない模様。

リリースには、共同開発したAutomagiについて、「自然言語技術」に強みを持つ会社としています。

自然言語とは

人間が日常的に読み書きしたり、話したりするのに使っている言語のこと。

たとえば、日本語、英語、フランス語などが自然言語の一種です。

自然言語と対比する言語として、人工言語という概念もあります。

たとえば、PythonやRのようなプログラミング言語は人工言語の例です。

自然言語処理の応用技術

機械翻訳

Google翻訳やDeepLのような機械翻訳は、身近な自然言語処理の応用技術です。

多分、一度は使ったことがあるかと。

質問応答システム

自然言語で表現された質問文に対して適切な回答を行う技術です。

多くの質問応答システムは、ファクトエイド型の質問に回答することに焦点を当てています。

ファクトエイド型とは、

  • 死亡保険の最低加入年齢は何歳ですか?
  • 公的介護保険が導入されたのは何年ですか?

というような、回答が短いテキストで表現される質問のことです。

これに対し、ノンファクトエイド型とは、以下のような質問です。

  • 医療保険とはどのような商品ですか?
  • 台風はなぜ発生するのですか?

情報抽出

非構造化データであるテキストを、構造化された表現に変換するタスクのことです。

たとえば、

損保ジャパンでは、LINEアプリ上で自動応答機能(以下「チャットボット」)がお客さまの請求手続きのナビゲートを行う「SOMPOらくらくスマート請求」を提供しています。 従来は、事故受付後、保険金支払担当者による支払可否の判断が必要でしたが、本システムの導入により、お客さまは24時間・365日、事故受付から請求手続きまでシームレスに行うことが可能となります。問題のないご請求については最短30分で請求手続きが完了します。 なお、お客さまの保険金請求の手続きにあたり、事故状況やおケガ等の入力内容からAIが保険金の支払可否を判断するシステム開発は、国内初の試みです(2021年10月当社調べ)。

損保ジャパンのリリース(2021年11月30日)

という文章の中から、抽出したい情報(例えば、会社名、サービス名称、最短請求期間)をあらかじめ定義しておき、その情報をテキストから抽出するようなタスクです。

スロットスロット値
会社名損保ジャパン
サービス名称SOMPOらくらくスマート請求
最短請求期間30分

対話システム

自然言語で人間と対話できるシステムのことです。

質問応答システムが一問一答であるのに対して、対話システムは対話の履歴を使って受け答えします。

対話システムは、対話を通じて解決したい目標があるか否かで、タスク指向と非タスク指向のシステムに分類されます。

タスク指向の対話システムは、何らかの課題を解決することを目標としたものです。

たとえば、

  • 保険の引受査定をすることが目標
  • 保険金請求の審査をすることが目標

それ以外のシステムは、非タスク指向型対話システムと呼ばれ、ユーザーと雑談するようなシステムが該当します。

自然言語処理の始まりは、今のコンピュータの原形が生まれたのと同じ1940年代であり、コンピュータでことばを扱うことは、その誕生時からの夢でもありました。

それから80年経過した今、自然言語処理が保険ビジネスに活用されるようになったのは感慨深いものがありますね。

(2021年12月24日に追加)

明治安田生命の永島社長も「将来的に保険金の申請から入金まで5分以内に済ませる仕組みにする」とコメントしています。

(2022年1月17日に追加)

産経新聞に「保険各社、競う支払い迅速化 広がるAI活用」という記事が掲載されています。

内容開始時期パートナー企業
東京海上日動事故車両の損害部分をAIが分析し、受け付けから支払いまで最短30分に短縮。5年度に傷害や火災保険でも同様の自動化を予定令和4年2月メトロマイル
損保ジャパン事故車両の損害部分をAIが分析し、受け付けから支払いまで最短30分に短縮。傷害保険でも同様の自動化を予定4年度中Automagi
三井住友海上ドライブレコーダーの映像データからAIが事故状況を文章や図で自動生成するシステムを導入し、保険金支払い時間を短縮2年11月トラクタブル
あいおいニッセイ同和同上2年9月同上
明治安田生命申請データをAIが分析し、給付金などを5分以内に入金4年4月以降
住友生命診療明細などをAIが判定し、入院給付金を退院翌日払い4年1月シナモン

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