がん保険の「待ち期間」と保険乗り換え時の二重加入の問題
SOMPOひまわり生命保険のがん保険、免責期間を無料に
- 従来のがん保険では、逆選択リスクの抑制の目的で、契約直後の3か月間は免責期間としている
- 免責期間も保険料を支払う必要があったが、SOMPOひまわりは、免責期間の保険料をなくしたがん保険を売り出す
- 保険料が発生しない期間を設けたがん保険は業界初
- 契約を乗り換える場合、新旧契約に二重加入することなく、円滑な乗り換えを行うことができる
がん保険の「待ち期間」
なぜ、がん保険には「待ち期間」があるのか。それは、告知義務違反だけでは回避できない逆選択リスクを抑制するためである。
- からだの異常は、①自覚症状、②医師からの指摘でわかる
- ②の場合は、病院受診の経緯があれば、告知義務違反が適用される
- 一方、①の自覚症状だけの場合、告知義務違反に抵触することなく契約することが可能
- 自覚症状による顧客と保険会社の情報の非対称性をうめるために、待ち期間の規定がある
ただし、
待ち期間の設定に関しては、告知義務違反による解除権や契約前発病不担保規定が存在するため、過剰な危険防止策だという批判もある。
「がんとがん保険」(佐々木光信、保険毎日新聞社)
保険乗り換え時の二重加入の問題
かんぽ生命の不適切販売の際にクローズアップされた問題です。
顧客に対して新旧の契約を重複して結ばせ、保険料を二重に払わせたケースが多数あったことが明らかになったのだ。2016年4月~18年12月の新規契約分で、約2万2千件。新契約を結んでから7か月後に旧契約が解約されて、二重加入となっていたのだ。
「かんぽ崩壊」(朝日新聞経済部、朝日新書)
かんぽ生命の場合、郵便局員が営業手当欲しさに、顧客に不利益を強いたものとみられています。がん保険の場合、事情は違いますが、乗り換え契約の場合、待ち期間の保険料を二重に負担するという点では共通しています(二重負担を回避するには、無保険期間が生まれる)。
その意味で、今回のSOMPOひまわり生命のがん保険は、顧客利益を第一に考えた、よい取り組みですね。
ちなみに、保険数理的には、保険料払込期間を調整するだけなので、さほど難しくない印象。柔軟なシステム対応を行える保険会社が追随するかもしれません。