遺族年金実態調査で見るSDGsのジェンダー平等

2021年12月24日に年金制度基礎調査が公表されました。

今回は、遺族年金受給者の実態調査。

調査の目的は、

国民年金及び厚生年金保険の遺族年金受給者について、収入、支出、就業状況等の実態を総合的に把握し、年金が受給者の生活の中でどのような役割を果たしているかをとらえ、年金制度運営のための基礎資料を作ること

令和2年年金制度基礎調査の「調査の概要」

調査の対象は、遺族年金の受給者から無作為抽出した約2.3万人。

郵送で調査票を送付した上で、郵送で回答。回収率は約7割。

遺族年金受給者の就業率の推移

遺族年金受給者の就業率は、ここ10年で上昇していることがわかります。

SDGsにおけるジェンダー平等

SDGsに「ジェンダー平等を実現しよう」という目標があります。

ここで、女性のあらゆる権利の改善が掲げられていますが、日本のこの項目の評価は低調なものとなっています。

ジェンダーギャップ指数2021によると、日本は156か国中120位。特に、経済と政治における順位が低くなっています。

先進国の内側にある貧困(いわゆる格差)を表す指標として、相対的貧困という概念があります。

相対的貧困の定義は、全世帯の所得の中央値の半分以下とされています。

OECDの基準によると、日本の場合、相対的貧困の等価可処分所得は122万円以下(2015年時点)となります。

ここで、等価可処分所得とは、世帯の可処分所得を世帯の人数の平方根で割ったもの。

日本では、約6人に一人が相対的貧困層に該当すると言われており、日本は先進国の中でも、相対的貧困率がかなり高い国となっています。

相対的貧困率と平均公的年金額の比較

ここで、遺族年金受給者の平均公的年金額を見ると、

平均額
厚生年金のみ149.7万円
厚生年金と基礎年金の両方157.2万円
基礎年金のみ(夫)110.0万円
基礎年金のみ(妻)110.5万円

基礎年金のみの遺族年金受給者の平均額が、相対的貧困ラインを下回っていることがわかります。

これは、遺族基礎年金の年金額の計算方法からすると、当然ですが。

遺族基礎年金の年金額(令和3年4月分から)

  1. 子のある配偶者が受け取るとき
    780,900円+子の加算額
  2. 子が受け取るとき(次の金額を子の数で割った額が、1人あたりの額)
    780,900円+2人目以降の子の加算額

1人目および2人目の子の加算額 各224,700円

3人目以降の子の加算額 各74,900円

遺族基礎年金受給者の仕事の内容

次に、遺族基礎年金の受給者にフォーカスして、仕事の内容をみると、

常勤臨時自営家族従業者その他不詳
基礎年金のみ(夫)81.7%3.6%9.8%2.0%1.8%1.1%
基礎年金のみ(妻)41.8%46.5%5.1%1.7%3.5%1.3%

女性の臨時の割合が高くなっている点が目につきます。

OECDの調査によると、日本の場合、親が就業しているひとり親世帯の相対的貧困率は54.6%、シングルマザーの実に半数以上が貧困層なっています。これは先進国の中ではとびぬけて高い数字です。格差社会といわれるアメリカが35.8%であることが考えると、いかに日本のシングルマザーが過酷な状況に置かれているかがわかると思います。

この貧困の背景には、就業形態が大きな影響を与えています。厚生労働省の調査によると、母子世帯で就業している81.8%のうち、48.4%がバートや派遣社員といった非正規雇用となっています。

2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望(落合陽一)

遺族基礎年金受給者本人の労働による収入額

100万円-100-200万円200-300万円300-500万円500-850万円850万円+不詳
基礎年金のみ(夫)3.4%5.9%13.7%39.3%34.4%2.5%0.7%
基礎年金のみ(妻)20.7%36.4%19.6%14.2%7.7%0.4%1.1%

ここでも、ジェンダーギャップが大きいことが見て取れます。

冒頭のグラフで見たように、就業率の向上は良い傾向ですが、

女性の権利保護や社会進出が出遅れている日本の歪みが集約されているのが、シングルマザーの貧困の問題といえるでしょう。「2030年まで」などの具体的な数字を立てて目標を決める意味が、この領域にありそうです。

2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望(落合陽一 )

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