令和4年度与党税制改正大綱:私的年金等に関する公平な税制のあり方

毎年恒例の税制改正大綱が公表されました。

私的年金に関する部分を、昨年度の税制改正大綱と比較してみました。

まず、最初の一段落。

令和4年度令和3年度
働き方やライフコースが多様化する中で、老後の生活に備えるための支援について、働き方によって有利・不利が生じない公平な税制を構築することが、豊かな老後生活に向けた安定的な資産形成の助けになると考えられる。働き方やライフコースが多様化する中で、老後の生活に備えるための支援について、働き方によって有利・不利が生じない公平な税制の構築が求められている。

昨年度は「求められている」という表現になっており、「誰が?」という部分が少し気になっていたんですが、今回はその部分の表現が変更されています。

次に、第2段落。この部分の記載は、大きく変更されています。

令和4年度令和3年度
こうした観点から、令和3年度税制改正大綱では、私的年金等の拠出・給付段階の課税について、雇用の流動性や経済成長との整合性なども踏まえ、税制が老後の生活や資産形成を左右しない仕組みとするべく、諸外国の例も参考に給与・退職一時金・年金給付の間の税負担のバランスを踏まえた姿とする必要性について指摘した。私的年金や退職給付のあり方は、個人の生活設計にも密接に関係することなどを十分に踏まえながら、拠出・運用・給付の各段階を通じた適正かつ公平な税負担を確保できる包括的な見直しに向けて、例えば各種私的年金の共通の非課税拠出枠や従業員それぞれに私的年金等を管理する個人退職年金勘定を設けるといった議論も参考にしながら、老後に係る税制について、あるべき方向性や全体像の共有を深めながら、具体的な案の検討を進めていく。こうした観点から、拠出段階の課税については、例えばイギリスやカナダにおける各種私的年金の共通の非課税拠出限度枠なども参考に、働き方によって税制上の取扱いに大きな違いが生じないような姿を目指し、議論を具体化していく段階にきている。また、給付段階の課税について、給付が一時金払いか年金払いかによって税制上の取扱いが異なり、給付のあり方に中立的ではないこと、勤続期間が20年を超えると一年あたりの控除額が増加する仕組みが転職などの増加に対応していないといった指摘がある。雇用の流動性や経済成長との整合性なども踏まえ、税制が老後の生活や資産形成を左右しない仕組みとするべく、諸外国の例も参考に給与・退職一時金・年金給付の間の税負担のバランスを踏まえた姿とする必要がある。

注目の退職所得控除の記載は、今年は削除されてます。

政権が変わり、この部分の議論はスローダウンする感じでしょうか。

多分、以下の経済財政報告は、前政権下で執筆されたものだと思うので。

令和3年度の税制改正大綱には、その後の段落がありますが、その部分は省略して、最後のなお書きで始まる段落。

令和4年度令和3年度
なお、高所得者層において、所得に占める金融所得等の割合が高いことにより、所得税負担率が低下する状況がみられるため、これを是正し、税負担の公平性を確保する観点から、金融所得に対する課税のあり方について検討する必要がある。その際、一般投資家が投資しやすい環境を損なわないよう十分に配慮しつつ、諸外国の制度や市場への影響も踏まえ、総合的な検討を行う。なお、金融所得に対する課税のあり方について、家計の安定的な資産形成を支援する制度の普及状況や所得階層別の所得税負担率の状況も踏まえ、税負担の垂直的な公平性等を確保する観点から、関連する各種制度の在り方を含め、諸外国の制度や市場への影響も踏まえつつ、総合的に検討する。

「制度の普及状況を踏まえ」という記載が消えたのは残念な気がしますが、令和4年度のこの段落は、明確に「高齢者層」をターゲットにしているので、格差是正の色合いが強くなっている印象です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です