気候変動リスク:アクチュアリーの新たな思考方法が求められる領域
Radeのプレゼンの中で以下のような投げかけがあります。
- 極端な竜巻の発生確率は、過去から変化しているのか?
- 再建のコストは木材価格の高騰の影響を受けているのか?
- これらはランダムな異常現象なのか、それとも長期的なトレンドの一部なのか?
- 異常現象のリスクマネジメントに使用される大災害モデルは今でも正確か?
- 自社の再保険は十分か?
- これらのトレンドを反映させるために料率を調整する必要があるか?
過去のトレンドは将来の変化を適切に予測しない
観測された気候変動とそれに起因する気候変動は、温暖化する世界の首尾一貫した姿を示している。
しかしながら、観測された変化と起因する変化が地域間で出現している。また、これらの変化の中には前例のないものもあることから、影響とリスクを計算するために過去のデータを用いる方法は、将来のリスクと影響を予測するためにはそれほど適用できない可能性があることがわかる。
20世紀あるいは21世紀初頭に計算された気候統計、例えばある地域におけるある異常気象の再現期間などは、もはや適用できないかもしれない。将来の事象のリスク推定を変更する可能性がある。過去の傾向ではなく、気候予測をリスク分析に取り入れることは、推定を助けることができる。しかし、気候モデルのデータを使用する際には、目的適合性を確保するために注意を払う必要があり、潜在的なバイアスを考慮する必要がある。
新たな思考方法の必要性
次元 | 伝統的な領域 | 気候変動 |
初期教育 | 必要なスキルは試験でカバー | 気候リスクに関するコンテンツはほぼない |
継続教育 | 業務に関連するトピックをカバー | 未開発 |
重要なスキル | 数学、データ、コンピュータサイエンス | 自然災害、気候モデリング、マクロ経済、社会科学など |
専門性 | 伝統的な領域での専門性 | アクチュアリーは多くの専門家の中の一つ |
データ | 金融・保険に特有のデータ | 外部データ(多くの人口統計データで長期予測) |
変化のスピード | 中程度 | 非常に速い |
不確実性 | 既存のツールで理解・定量化可能と信じられている | 高い |
社会はアクチュアリーに何を求めているのか
- 気候リスクが企業にどのような影響を与えるのか、どのような機会が存在するのか、どのようなスキルを身につける必要があるのかを理解することに重点を置いた教育・指導
- 気候リスクに関する膨大な情報を統合し、実用的なインテリジェンスを構築するための支援と知識の進歩に応じた定期的な更新
- 現在と将来のリスクを反映した、関連する危険に対する物理的なリスク評価と、信頼水準と不確実性の適切な理解
- 市場、投資ポートフォリオ、業務における移行リスクの評価(法的リスクや風評リスクを含む)
- 気候変動リスクをリスクマネジメントの枠組み全体に組み込むためのプロセス
- 様々なステークホルダーへの報告支援
- サプライヤーを含む自社の事業における排出量の測定と、(希望に応じて)自社のカーボンニュートラル認証の方法とカーボンニュートラルやネットゼロへの進捗を認証する方法
- 商品設計、価格設定、引受、再保険、技術等に関する戦略