以前から気になっていたマーサー 「グローバル年金指数ランキング」(2020年度)のレポートを読んでみました。
前々から気になっていたマーサーの「グローバル年金指数ランキング」。
日本の順位は、39か国中の32番目。
賛否両論あるランキングですが、日本は、中国・インド・メキシコ・フィリピン・トルコ・アルゼンチン・タイとならんでD評価。
D評価は、「望ましい機能を持ちながらも、大きな弱点や欠落があり、それに対処しなければならないシステム。これらを改善しなければ、その有効性と持続性が疑われる。」というものです。
日本の年金指数の評価
日本の退職所得制度は、定額の基礎年金、収入に応じた厚生年金、任意加入の年金制度で構成されています。
日本の年金制度の総合的なインデックス値は、以下を行うとアップします。
- 家計の貯蓄レベルの向上
- 年金加入率の継続的な向上と、保険料や資産の水準の引上げ
- 退職金の一部を年金として受け取らなければならないという要件の導入
- 平均寿命の伸びに伴い、公的年金年齢のさらなる引き上げの発表
- GDPに占める政府債務と年金支出の削減
日本のインデックス値は、2019年の48.3から2020年の48.5へとやや増加しました。
持続可能性サブインデックスの改善は、OECDが公表している正味所得代替率の低下によってほぼ相殺されました。
第12回年金綜合研究所シンポジウム:国際比較から見る日本の年金制度等の課題
元三菱UFJ信託のアクチュアリーである佐野さんは、マーサーの年金指数について、以下のように報告しています。
マーサーの年金指数から得られたこと
- 各国の社会背景・国民性等が異なるため、点数による順位づけ・優劣比較はなじまない
- 各国制度を比較することによって、各国制度の特徴・課題を把握することは有用
- 各国比較を通じて、日本の年金制度の改善の方向性を探ることができるのではないか
日本の特徴
- 日本の強みは、公的年金制度の持続性
- 日本の課題は、私的年金制度の適用率の低さ
- 私的年金制度が任意適用のため、適用率が低く、老後の安定的収入確保につながっていない
- 確定拠出年金の適用拡大は、私的年金制度の充分性確保の方向性に沿うもの
- 確定給付企業年金・確定拠出企業年金・退職金の枠組みを超えた施策が必要
- 公的年金・私的退職給付制度・個人貯蓄を俯瞰した老後所得確保に向けた政策展開が望まれる
個人的に、カナダの指数も気になったので調べてみました。
カナダの年金指数の評価
カナダの退職所得制度は、ユニバーサルな定額年金、ミーンズテストによる補助的な収入、再評価された生涯所得に基づく所得比例年金、任意加入の職業年金(その多くは確定給付制度)、および任意加入の個人退職貯蓄制度で構成されています。
カナダの年金制度の総合的なインデックス値は、以下を行うとアップします。
- 企業がスポンサーとなる年金制度を持たない従業員にとって魅力的な商品を開発することにより、企業年金制度への加入率を高める
- 家計の貯蓄率を高め、家計の負債を減らす。
- GDPに占める政府債務の割合の低減
- 平均寿命の上昇に伴い、高年齢層の労働力参加率を高めること
カナダのインデックス値は、OECDが発表した正味所得代替率の低下に伴う適切性サブインデックスの減少により、持続可能性サブインデックスの改善が相殺され、2019年の69.2から2020年の69.3へとわずかに増加しました。