CERA試験で学ぶ、遺伝子検査の普及が保険会社に与える影響

技術革新のペースが速い領域の一つに遺伝子検査があります。

乳がんの遺伝子検査、12月から公的医療保険の対象に

  • 厚生労働省は10日、乳がんの遺伝子検査「オンコタイプDX」について、公的医療保険の対象とすることを決めた
  • 検査の対象は、女性ホルモンに反応して、がんが増殖するタイプの早期患者。
  • 採取したがん組織から、再発に関わる21種類の遺伝子を解析し、再発リスクを点数化する。点数は、手術後に抗がん剤治療を行うかどうか、判断の目安になる。

2020年9月のCERA試験を見ると、遺伝子検査に関する問題が出題されています。

ロングライフ社のリスク管理部門は、遺伝子検査をめぐる懸念が高まっていると考えている。最近、L島では、先祖をたどるために遺伝子検査を受ける人が増えている。この検査の結果の一部は、ロングライフ社の保険でカバーされる特定疾病を含む、重大な病気への罹患のしやすさを示している。保険契約者が遺伝子検査を受けた場合、その結果をロングライフ社に共有する義務はない。

2020年9月のSP9試験の問題2

この遺伝子検査は、「先祖をたどるための遺伝子検査」であり、先天的な遺伝情報を扱う点が、公的医療保険の対象になる「遺伝子検査」とは異なります。

この問題と模範解答を見ると、

問題解答
(iv)2つの明確な例を挙げて、逆選択とモラルハザードの違いを説明せよ逆選択とは、商品に対する需要と損失リスクとが正の相関を持つ場合におこる。例えば、健康な人と不健康な人の生命保険料が同じなら、不健康な人の方が保険に入りやすいかもしれない。モラルハザードとは、取引相手/他者がリスクの一部を負担するため、当事者は通常より慎重に行動しないこと。例えば、保険に加入しているから、スポーツや過激な運動をする際にすべての安全指示に従わないなど。逆選択とモラルハザードは、情報の非対称性から発生しうる。でも、モラルハザードは、いったん保険が成立すると、保険会社は保険契約者の行動をコントロールすることができない。
(v)遺伝子検査がロングライフ社にどのような影響を与えるかを説明せよ特定疾病の売上が増加する可能性が高い。これは一見、ポジティブに見える。でも、これらの人々は、特定の重大病気にかかりやすいと知っている人たちである。彼らは、保険会社が知らない情報を持っている。これは、モラルハザードではなく逆選択である。罹患リスクの低い顧客の解約率が増加するかもしれない。逆選択は死亡保険や特定疾病保険で生じる可能性がある。死亡保険や特定疾病でモラルハザードが起こる可能性もある。ロングライフ社の保険金支払は、価格設定時の想定よりも悪化する可能性が高い。このため収益性は低下する。プライシングや責任準備金の前提を変える必要が生じうる。新たな支払発生率にあわせて投資戦略を変更する必要がある可能性もある。さらに不確実性の増加により、自己資本規制が強化される可能性がある。
(vi)遺伝子検査の利用可能性から生じるリスクを軽減するためにロングライフ社が取り得る行動を提案し、これらの行動から生じる二次的なリスクも示せ①遺伝子検査は、病気の発生を保証するものではない。このリスクは実際よりも深刻であると認識されている可能性があるため、検査の精度を調査する。ただし、調査にはコストがかかる。②特定疾病の新規契約に上限を設定、もしくは値上げ。でも、商品の競争力が犠牲になる。③遺伝子検査に含まれる一部の特定疾病を免責にする。標準的な疾病をカバーしないことによる風評リスクを高める可能性があるが。④特定疾病保険を出再。コストとカウンターパーティリスクがあるが。⑤追加の責任準備金を積む。他に投資できないので機会費用が発生。⑥規制が許すなら、保険契約者に自発的に結果を共有するよう要請。そうすると、保険会社は経験データを取得できるようになるが、情報開示のインセンティブとして割引を提供する必要があるかもしれない。

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