DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)とリスクマネジメント
先週オンラインで開催された、アクチュアリーの国際会議でのこと。
ERMのホットなトピックについて、各国のアクチュアリーが議論していました。
もちろん一番のトピックは気候変動。
でも、その単語と並んで耳にしたのが、DE&Iという言葉でした。
DE&Iとは、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンのこと。
偶然、金融庁がIAISのプレスリリースを公表していました。
これを見ると…
IAIS第28回年次総会および年次会議では、IAIS戦略計画2020-2024を推進する上での主要な成果を振り返り、保険セクターに影響を与えるトレンドに焦点を当てる
- 金融危機後に実施されたいくつかの改革は大きく進展。ICSのデザインの最終決定とアグリゲーション・メソッド(AM)の比較可能性評価のスケジュールが順調に進んでいる。
- 気候変動に対する監督上の対応を加速させるための支援を確認。保険監督上の目的に資するDE&Iの考慮事項の重要性を強調する声明を発表。
- 国際的に著名な講演者とIAISのリーダーが保険セクターの戦略的テーマについて議論を深める
ここにもDE&Iというワードが登場しています。
さらに、IAISの声明を読み続けると…
DE&IがIAISのアジェンダで重要性を増す
IAISは、保険監督の目的、ひいてはIAISの使命にとって、多様性、公平性、包括性(DE&I)を考慮することの重要性を認識する声明を発表した。
保険会社の組織やビジネスモデルの中でDE&Iを推進することは、健全性や消費者の成果、さらには持続可能性の目標を支えるものであるとの認識が高まっている。
DE&Iは、IAIS戦略計画2020-2024で特定されたいくつかの戦略的テーマにも触れている。
行動と文化だけでなく、金融包摂、持続可能な経済発展、技術革新なども含まれている。
IAISタウンホールで、議長のVicky Saporta氏は次のように述べた。
この声明は、DE&Iに焦点を当てることでもたらされる広範な利益を我々の任務に統合するために、我々のメンバーと業界を支援するという、非常に重要な旅の第一歩である
Vicky Saporta氏
IAISは、2021年11月16日にDE&Iに関する声明を公表しています。
保険監督におけるダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DE&I)の重要性
IAISは、保険監督の目的、ひいてはIAISの使命に対して、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DE&I)を考慮することの重要性を認識しています。
保険会社の組織やビジネスモデルの中でDE&Iを推進することは、保険会社の健全性と消費者の結果と持続可能性をサポートするという認識が高まっています。
- 組織内に組み込まれたダイバーシティは、公平性と包括性の文化によって強化される。意思決定を改善し、集団思考のリスクを軽減することで、保険会社のコーポレート・ガバナンスとリスク・マネジメントの実務に影響を与える。保険会社の財務結果の改善にも貢献するかもしれない。
- 保険会社のビジネスモデルに組み込まれたDE&Iは、イノベーションを促進し、消費者にポジティブな結果をもたらすかもしれない。例えば、保険商品の設計、販売、サービスは、消費者の実際のニーズにより適したものになるだろう。また、保険商品の設計・販売における差別的な行為を防止し、不正行為を減少させることができるかもしれない。
- 保険会社の組織内でDE&Iを推進することは、よりアクセスしやすい市場を創出し、伝統的に十分なサービスを受けていないコミュニティや個人の金融包摂を支援するなど、より広範な環境・社会・ガバナンス(ESG)目標を達成する役割を果たす。
DE&Iは、IAIS戦略計画2020-2024で特定されたいくつかの戦略的テーマに触れています。
それは特に、行動と文化に関連していますが、金融包摂と持続可能な経済発展、技術革新にも関連しています。
経済発展や技術革新にも関連しています。
したがって、IAISは、保険監督者や保険セクターが、DE&Iの問題をさらに検討し、行動を起こすための努力を支援することで、これらの戦略的テーマに関連するDE&Iに関する作業を優先します。
具体的には、IAISは以下の活動を通じて、DE&Iに関する活動を深め、強化することを約束します。
- DE&Iの目標を支援するための保険セクターの取り組みと監督当局の措置について、ステークホルダーとのエンゲージメントを含めた調査を行う。
- 現在進行中のIAISのプロジェクトや活動、特にコーポレート・ガバナンスや文化、行動に関連する活動にDE&Iの側面を取り入れる。
- 実施パートナーであるAccess to Insurance Initiative(A2ii)など、他の国際機関やパートナーとの協力の機会を探る。また、監督機関との対話やグッド・プラクティスの共有を促進する。
コーポレート・ガバナンス・コード
このようなグローバルな流れとの関連性はともかく、日本でも2021年4月6日にコーポレート・ガバナンス・コードが改訂されています。
DE&Iっぽい部分を抜き出すと、
2.企業の中核人材における多様性の確保
・管理職における多様性の確保(女性・外国人・中途採用者の登用)についての考え方と測定可能な自主目標の設定
・多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針をその実施状況とあわせて公表
「コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について」の公表について
多様性という概念が日本の保険会社に浸透するのか。さらに、それがイノベーションを促進し、消費者に対するサービス向上につながるのか。加えて、保険会社のリスク文化はどう変わるのか。
2020年代前半の、アクチュアリー&リスクマネジャーの重要課題になりそうな予感がします。