アリババグループの金融企業であるアントグループのP2P保険「相互宝」が終了

以前、中国の規制当局とP2P保険について話をしたことがあります。

その時は、まだ規制の対象としていないと語っていました。

「まだ」という表現が気になっていたけど、規制強化の流れもあり、売り止めになった模様。

ということで、ローンチからの経緯を、簡単にまとめてみました。

相互宝については、ニッセイ基礎研のレポートが詳しい。

中国においてP2P保険が急速に普及する理由

  • 2018年10月にアリババ・グループが、割り勘で後払いという新しいスキームの「相互保」(現在の「相互宝」)を発表
  • 相互宝の加入者はローンチ後およそ1年で1億人に
  • アリババ・グループは、2019年のネット互助プランの加入者は1.5億人に達し、2025年までに加入者合計は4.5億人にまで拡大すると予測
  • ネット互助プランは既存の民間保険よりも更に早いスピードで加入が進んでいる
  • ネット互助プランの加入者の年齢構成は、30代が36.8%、20代が19.8%、10代が14.3%を占めており、30代以下が加入者全体の70.9%を占める
  • 「相互宝」の加入理由は、「病気になったときに備えて」(46.1%)が最も多く、次いで、「仕組みが分かりやすく、透明性が高いと思ったから」(42.7%)、「アリババのサービスを信用し、評価しているから」(37.9%)
  • 「自分が払う費用が少なくてすむと思ったから」(37.5%)がそれに続いており、病気になったときの備えを少ない負担で用意したいというコスト面が重視されている
  • ネット互助プランの普及は、公的医療保険における自己負担の高さ、私的保険における保険者と保険契約者の信頼構築といった競合相手の課題も後押ししている

JustInCaseは、自身のブログで相互宝の特徴を以下のように説明している。

保険もシェアする時代!一番熱いアリババの相互宝を紹介

  • 友達同士や同じリスクに対する保険に興味のある集団(以下、この集団を”プール”と呼ぶ)で、保険料の拠出を行う
  • 保険事故が発生し保険金請求が行われた際には、このプールから保険金が支払われる
  • 保険期間満了時(通常は1年後)に、保険金請求の額が少なく、プールに残高が残っている場合には、その残高は、保険金請求を行わなかったプールメンバーにキャッシュバック(もしくは次年度割引)される
  • 加入条件は、アリババ独自の個人信用評価システムである芝麻信用スコアが600点以上となること
  • アリペイユーザー以外は加入不可

ローンチ後の販売状況は良好であったものの、近年課題が増えてきた。

例えば、Fintechジャーナルでは、以下のように説明している。

業界揺るがす「わりかん保険」、加入者“1億人超え”でアリババらが直面した難題

  • 加入者1億人の大台で足踏みをし、月によっては1億人を割り込むこともある
  • 運営は互助金支払いの判断をすべて自動化し、判断できないものについては加入者による投票を行い、その結果で自動的に判断
  • こうすることで、調査や判断に関わるコストを削減し、同時に加入者に対しては公平性や公正さを提供
  • 加入者が増えるにしたがって、分担金がある程度上がっていく
  • 分担金が上がるたびに、疾病リスクの低い健康な加入者の離脱が起こる
  • いわゆる、リスク濃縮という現象

そして、ネット互助保険「相互宝」は2022年1月28日に終了。

その理由は以下のように説明されている。

中国で話題だったネット互助保険「相互宝」が失敗した理由

  • サービス終了となった理由の一つは政府による規制強化
  • 保険業の認可や実店舗の運営が必要になったため、サービスの継続が難しくなった
  • 相互宝は当初、大都市に住むテクノロジーに敏感な若者の間で流行った
  • まだ若いため保険金が必要になるような大きな病気になりにくく、初年度の保険負担金は29元で済んだ
  • ところが時間が経過するとサービスの利用者は拡大し、徐々に幅広い年齢層に浸透していった
  • その中には病気を心配して加入する人や、病気にかかるリスクの高い人も増えてくる
  • そうすると、保険金の請求件数が以前よりも格段に多くなる
  • 2020年の負担額は90元に、2021年には160元に上昇
  • 相互宝には裁判員システムがあり、これも悪い方に影響した
  • 加入者同士の裁判における衝突で利用者が減ったとも言われている
  • 中国の各地域で、年100元以下で加入できる「惠民保」と呼ばれる安価な保険商品が台頭
  • これも互助保険の存在への疑問に拍車をかけた

(2022年1月18日追加)

ニッセイ基礎研が1/14に「相互宝、運用終了へ(中国)」という記事を掲載。

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