IBMがWatson Health事業を売却
IBMのWatsonといえば、一時期はAIの象徴的な技術でしたが、競争環境がし烈化する中で、ヘルスケア事業から撤退する模様。Watsonは、保険業界の中でも、第一生命、かんぽ生命、富国生命などが導入していました。
シンボリックなこのニュース。CNN、Bloomberg、NYタイムズでは、以下のように報道されていました。
IBM is selling off its Watson Health assets
- この取引は、IBMが、ハイブリッド・クラウド・コンピューティング機能の構築に注力するため、ヘルスケア分野での野心から一歩退くことを示唆
- IBMは、医師や研究者、保険会社がヘルスケアの最大の問題を解決するためにデータを活用することを目的に、2015年に独立した事業部門としてWatson Healthを立ち上げた
- 同社はヘルスケアデータを取得するために一連の取引に投資し、糖尿病治療の改善からがん治療のオーバーホールまで、さまざまな課題に取り組んできたが、この大胆な賭けはうまくいかなかった
- Wall Street Journalは約1年前、Watson Healthの年間売上高は10億ドル程度で利益はゼロ、IBMは同事業の売却を検討していると報じた
- ヘルスケア・テクノロジーの分野も競争が激しくなっている
- Googleは2019年、全米最大級の非営利医療システムであるAscensionと、患者の健康データを収集・分析に関する提携
- 昨年4月、マイクロソフトは160億ドルを投じてヘルスケアAI開発企業のNuanceを買収し、マイクロソフトのヘルスケア向けクラウド事業と提携
- 先月、オラクルはヘルスケアソフトのCernerを283億ドルで買収すると発表
IBM Sells Some Watson Health Assets for More Than $1 Billion
- IBMは2015年にWatson Healthを立ち上げ、その中核となる人工知能プラットフォームを使って医療従事者が膨大なデータを分析できるようにし、最終的にはがん治療に革命を起こすことを目指していた
- しかし、同社の野心の多くは実現されておらず、一部の顧客からは、同社の製品が誇大広告に見合わないという不満の声が上がっている
- この事業売却の決定は、より成長の早いクラウドコンピューティング事業に注力するためのものだと考えられている
IBM is selling off Watson Health to a private equity firm.
- IBMは事業を縮小しており、2020年には、がん診断のために設計された2つの製品、Watson for GenomicsとWatson for Oncologyを廃止している
- 昨年11月、IBMは年間売上高190億ドルの大規模なバックオフィス・テクノロジー・サポート&サービス事業をスピンアウトさせた
- Kyndrylと呼ばれるこの事業は、IBMが現在注力しているクラウドコンピューティングや人工知能といった分野よりも利益率や成長の見込みが低かった
- IBMの幹部は、ワトソン・ヘルス資産の売却を、そうした広範な戦略の一環であると説明
- IBMのソフトウェア事業を担当する上級副社長Tom Rosamilia氏は、この動きは「IBMがプラットフォームベースのハイブリッドクラウドとAI戦略にさらに注力するための明確な次のステップ」だと述べている