米国アクチュアリー会のエマージング・リスク・サーベイ
毎年恒例のサーベイが公表されました。(⇒ 詳細はこちら)
この「エマージング・リスクに関する調査」は、通常の計画サイクルを超えて、リスクマネジャーの考えを追跡し、時系列で傾向を把握し、戦略的な意味を探ったもの。
この調査は、カナダ・アクチュアリー会(CIA)、米国損保アクチュアリー会(CAS)、米国アクチュアリー会(SOA)が主催。
質問は定量的・定性的なもので、回答の選択肢を維持することで毎年一貫性を持たせ、進化するリスクマネジメントの実践を共有できるようにしている。
調査結果、特にコメントは、リスク管理者が匿名で同業者とネットワークを構築し、リスクに関する新しい考え方を共有するための手段となっている。
2021年11月に行ったこの調査には、153名が参加した。 北米を中心に(91%)、ヨーロッパ、アジア、南米、アフリカ、中東からの回答もあった。
リスク管理者の懸念は、気候変動、サイバー、金融変動リスク
- 2021年は、熱帯性暴風雨や山火事が多発する傾向が続き、世界的に政治的な極端さが続いた。
- 気候変動は、4つの調査項目のうち3つで首位を維持し、パンデミック/感染症は、現在のトップリスクとして首位を維持した。
- 気候変動リスクは、徐々に上昇を続けており、回答者の58%が選択。エマージングリスクのトップ(26%)および複合リスクのトップ(全リスクのうち11%が他のリスクと複合して選択)でも、最も高い回答となっている。
- 金融変動リスクは復活を続けており、すべての質問で上位5位に入っている。
- 「パンデミック・感染症」と「破壊的技術」が減少し、他のリスクは増加。
- 注目すべきは、「人口動態の変化」が過去最高を記録したこと(前回調査の4%から7%に上昇)、そして経済カテゴリのリスクが急上昇したことである。
- エネルギー価格ショックは前回調査の4%から18%に増加
- 資産価格の暴落は、「カレントリスク」(4%→7%)、「エマージングリスク」(2%→5%)ともに3%増加した。
- エマージングリスクの上位の質問では、ポピュリズムと移民があまり懸念されなくなったため、グローバリゼーションシフトだけが大きく減少した(5%から2%へ)。
ランキング
カレントリスク
1. パンデミック・感染症(27%)
2. 気候変動(16%)
3. 金融変動(10%)
4. サイバー・ネットワーク (8%)
5. 資産価格の暴落 (7%)
エマージング・リスク
1. 気候変動 (26%)
2. サイバー/ネットワーク (13%)
3. 金融変動 (10%)
4. 人口動態の変化 (7%)
5. 破壊的技術 (6%)
トップリスクの組み合わせ (回答者は、2つのリスクの組み合わせを3つ選択)
1. 気候変動 (11%)
2. サイバー/ネットワーク (9%)
3. 金融変動 (8%)
4. 戦争(内戦を含む) (7%)
5. 破壊的技術 (6%)
世界経済の見通し - 2022年への期待感の向上
- 2022年の世界経済への期待は高く、前回調査と比べて肯定的な見方をする回答者が増えている。
- 2022年の世界経済については、35%近くの回答者が「良い」または「強い」と予想しており、「悪い」とする回答は15%にとどまった。
地政学的リスクは依然トップ、経済・環境リスクは増加傾向
- 今回の調査では、「地政学的リスク」が2008年春の初回調査以来の低水準となった。
- 「パンデミック・感染症」が2020年の高水準から後退し、「経済」「環境」のカテゴリーが増加した。
- 「技術」カテゴリのリスクはやや減少。
保険会社のリスクマネジャーに影響を与えた「大辞職」
- 2021年に予想以上の数の個人が自発的に仕事を辞める現象「大辞職」は、パンデミックと従業員が仕事に何を本当に求めているかを熟考していることが原因だと言われている。
- 保険会社の従業員に対して、自社の状況において企業リスク管理機能にどのような影響を与えたかを尋ねたところ、回答者の63%が何らかの影響を受けており、10%近くが4つの選択肢のすべてで影響を受けていることがわかった。
- 影響を受けたと回答した人の50%以上がスタッフを失い、40%以上がスタッフの採用や経験豊富なスタッフの雇用に影響を受けている。
- 5人に1人以上の割合で、主要メンバーや影響力のある人数を失ったことがある。